当院は肩関節専門医による診療を行なっていきます
※他院で治療・検査歴があるが改善しない等で受診希望の方は診療情報と検査データをご持参いただけると受診が早くなります
反復性肩関節脱臼
いわゆる肩の脱臼癖です。何度も繰り返すような方の場合、当院では治療方針のご相談が可能です。
肩関節周囲骨折・脱臼
上腕骨近位部骨折や肩甲骨関節窩骨折、鎖骨遠位端骨折や肩鎖関節脱臼などの診断を受け、肩専門治療を相談したい方へ。
スポーツ時の肩の痛み
野球などの投球スポーツで肩の障害は特に多い疾患です。肩専門かつスポーツ医である当院でご相談下さい。
肩関節周囲炎・拘縮肩
periarthritis of the shoulder / frozen shoulder
病態
肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)は、肩の関節包や靭帯の炎症によって、痛みや可動域制限が生じる疾患です。炎症が生じる原因ははっきりしていませんが、特に50歳前後に多く発症する為、五十肩という俗称が用いられています。骨折や腱の断裂などと違い比較的軽症の疾患として軽視されがちですが、罹病期間が長いケースが多く、可動域制限が強い場合は日常生活での支障が大きいこともあります。後述の腱板断裂との鑑別も必要になる為、肩関節専門医による診療が有用です。
代表的な治療方法

保存的治療
薬物療法:鎮痛薬(NSAIDs)、外用剤、ステロイド注射、PRP療法など
リハビリテーション:可動域訓練、肩周囲筋訓練、ストレッチ、体幹の姿勢矯正など
物理療法:ホットパックなどの温熱療法や超音波療法など
サイレントマニピュレーション:関節拘縮が強い場合には神経ブロック注射で痛みを無くした状態にして徒手的に関節授動術を行うことで関節内の癒着を剥がし、可動域を再獲得します。
サイレントマニピュレーション後は再癒着を防止する為に頻回のリハビリテーションを勧めています。骨粗鬆症がある方は骨折のリスクがあります。

手術治療
関節鏡視下関節授動術:関節鏡視下で可動域制限の原因となっている癒着した関節包を切離することで肩関節可動域を再獲得します。数ヶ月間のリハビリテーションを行っても改善せず、可動域制限が強い方は手術適応を検討する必要があります。
腱板断裂を合併している場合には同時に腱板修復術を行います。
サイレントマニュピレーションと違い、骨折のリスクはほぼ無いですが、入院治療が必要になります。
サイレントマニピュレーションと同様に術後の再癒着防止が重要で、術直後には頻回のリハビリテーションが必要です。
腱板断裂
rotator cuff tear
病態
肩の腱板は肩関節の安定性を保ち、インナーマッスルとして腕を挙上する際に重要な役割を果たしますが、加齢や外傷により損傷することがあります。腱板が完全に断裂すると、肩の痛みや引っかかり感、挙上困難が生じます。腱の断裂部は自己治癒力が非常に弱い為、断裂した腱板が勝手に治癒することはありません。時間経過とともに徐々に断裂サイズが大きくなる傾向があり、断裂サイズや軟骨変性の進み具合によっては治療方法が変わることがあります。
代表的な治療方法

保存的治療
薬物療法:鎮痛薬(NSAIDs)、外用剤、ステロイド注射、PRP療法など
リハビリテーション:可動域訓練、肩周囲筋訓練、ストレッチ、体幹の姿勢矯正など
物理療法:ホットパックなどの温熱療法や超音波療法など

手術治療
関節鏡視下腱板修復術:関節鏡視下で断裂した腱板を修復する手術です。骨吸収性素材で作られたアンカーという糸やテープがついたネジ状治療インプラントをもともと腱板が付着していた上腕骨に打ち込み、糸やテープを用いて縫合します。断裂サイズや断裂腱の数によって追加処置が必要になることがあります。
関節鏡視下腱板筋前身術:腱板の断裂サイズが大きく、関節鏡視下腱板修復術では再断裂のリスクが高い方に行います。腱板を筋肉ごと肩甲骨から剥がして外側に前進させることで緊張が少ない状況で腱板修復ができるようになり術後再断裂リスクを低減させることが期待できます。
リバース型人工肩関節置換術:腱板の断裂サイズが大きく且つ関節の変形が生じて後述の腱板断裂性肩関節症(CTA: cuff tear arthropathy)になっている方にはリバース型人工肩関節置換術が適応になります。
変形性肩関節症
shoulder osteoarthritis
病態
肩の軟骨がすり減り、関節の変形や炎症を引き起こす疾患です。慢性的な痛みや可動域の低下が特徴です。
特に原因が無い一次性変形性肩関節症と、腱板断裂に伴う腱板断裂性肩関節症(CTA: cuff tear arthropathy)や骨折治療後の変形に伴う二次性肩関節症などがあります。保存的治療で疼痛が改善しなかったり、可動域の制限が強い場合には手術治療が行われます。
代表的な治療方法

保存的治療
薬物療法:鎮痛薬(NSAIDs)、外用剤、ステロイド注射、ヒアルロン酸注射、PRP療法など
リハビリテーション:可動域訓練、肩周囲筋訓練、ストレッチ、体幹の姿勢矯正など
物理療法:ホットパックなどの温熱療法や超音波療法など

手術治療
人工肩関節置換術術:変形した肩関節を人工関節に入れ替えることで肩関節機能を再建する手術です。一次性の変形性肩関節症の場合は腱板断裂を伴わない為、従来型の人工肩関節置換術が適応になります。
腱板断裂性肩関節症(CTA)の場合にはリバース型人工肩関節置換術(rTSA)が適応になります。当院院長はrTSAの認定資格を保有しています。
反復性肩関節脱臼
recurrent shoulder dislocation
病態
肩の外傷などを契機に上腕骨骨頭が肩甲骨関節窩から脱臼し、その後も脱臼を繰り返すようになってしまう、いわゆる脱臼癖です。
脱臼の際に肩甲上腕関節の前方関節唇損傷を生じることで肩の不安定性が遺残してしまいます。10代の肩の初回肩関節脱臼の約90%が反復性肩関節脱臼に移行してしまうと言われています。不安定性が軽度で日常生活に支障が無い場合はリハビリテーションなどの保存的治療を行いますが、脱臼を繰り返して日常生活やスポーツなどに支障が出ている場合には手術治療が行われます。
代表的な治療方法

保存的治療
薬物療法:脱臼直後で疼痛が強い場合は鎮痛薬(NSAIDs)、外用剤で疼痛を減らします。
リハビリテーション:可動域訓練、肩周囲筋訓練など
装具療法:脱臼直後の場合はスリング・三角巾固定で局所安静を行います

手術治療
鏡視下バンカート修復術:損傷した関節唇を修復することで関節不安定性を治す手術です。小皮切(1cm程度)を3カ所で行うことが多く、糸やテープが付いたアンカーというネジ状のインプラントを肩甲骨関節窩に挿入し、糸やテープで損傷した関節唇を修復します。
ブリストー手術:ラグビーやアメリカンフットボール、格闘技などのコンタクトスポーツをしている方の場合、強い衝撃により再脱臼のリスクがある為、烏口突起という肩甲骨の一部を切除して関節の前方に移行する手術を追加で行います。
肩関節周囲骨折・脱臼
shoulder fracture and dislocation
病態
転倒・転落、事故などで肩周りの骨折や脱臼を生じることがあります。
骨折部のズレが軽度であれば外固定を行い、時期を見てリハビリテーションを開始します。関節面のズレが大きい、骨片同士の接触が乏しいなどの場合、将来的な肩関節機能障害を可能な限り減らす為に骨接合の手術を行う場合があります。
上腕骨近位端骨折、肩甲骨関節窩骨折、肩鎖関節脱臼などの肩関節周囲骨折に対して、当院ではAO骨折治療原則に則った治療法を提供する際に肩関節専門医の視点からも最適な方法を検討します。具体的には関節鏡視下手術を併用することで手術侵襲を可能な限り少なくするケースや、上腕骨近位端骨折の粉砕が強くリバース型人工肩関節置換術が必要なケースにも対応が可能です。
代表的な治療方法

保存的治療
薬物療法:鎮痛薬(NSAIDs)、外用剤で疼痛を減らします。
リハビリテーション:受傷直後は患部外のリハビリを行います。急性期を過ぎてから可動域訓練、肩周囲筋訓練などを行います。
装具療法:スリング・三角巾固定で局所安静を行います

手術治療
骨折関節的手術(ORIF):プレートや髄内釘、スクリューなどを用いて骨折部を整復・内固定をして骨折部を安定化します。骨折の程度により最も適しているであろう術式を選択します。
鏡視下関節内骨折観血的手術(AsORIF):関節内の骨片を整復し内固定する手術を関節鏡を用いて小侵襲で行うことが可能です。上腕骨近位端骨折のうち、大結節骨折のみの場合や肩甲骨関節窩骨折などで有効なことがあります。骨片の大きさなどで適応を判断する為、他院で別の方法を勧められていいる場合にもご相談ください。
リバース型人工肩関節置換術:上腕骨近位端骨折のうち、結節の整復が不可能なほど粉砕が強い場合にはリバース型人工関節置換術(rTSA)が適応になります。当院院長はrTSAの認定資格を保有しています。

院長から一言
単に四十肩や五十肩(いわゆる肩関節周囲炎)と言われたものの、なかなか改善しない場合、治療方法に工夫が必要であったり、そもそも別の疾患である可能性もあります。
当院では肩関節外科専門施設で修練を積んだ経験を基に、診断・精細・加療を行い、保存的治療で改善が乏しい方については手術加療をご案内しています。
他院に長期間通院しているにも関わらず改善が乏しいような方は手術が必要な病態である可能性もあり、その場合は肩専門医の診察が望ましいです。
手術が必要な方については提携先施設へご紹介し、私が執刀を担当して術後のリハビリテーションを当院の外来リハを活用していただくことで手術前〜手術〜手術後と一貫した治療を提供させていただけることが当院の強みです。